神戸家庭裁判所 平成3年(少)1886号
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、法定の除外事由がないのに、Aと共謀の上、平成3年4月4日午前3時ころ、神戸市長田区○○町×丁目×番×号所在の○○住宅××号室実母方において、フェニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤約0.01グラムを水に溶かした覚せい剤水溶液を、右Aから自己の右腕に注射してもらい、もって覚せい剤を使用したものである。
(法令の適用)刑法60条、覚せい剤取締法41条の2第1項3号、19条
(処遇の理由)
少年の資質、環境等は、家庭裁判所調査官○○作成の少年調査票(編略)のとおりである。
少年は、本年2月ころから、同級生であったBから勧められて好奇心から覚せい剤を始め、本件までに20回近くも使用を繰り返していたものであって、覚せい剤を使用し始めて日は浅いものの、その使用感についてふわっとしていい気持ちになった旨供述していること、Bと連絡がとれなくなると、自ら本件共犯者であるAに接触して同人に射ってもらうなど積極性がうかがわれること、本件でも実母宅を実行場所に選び、相次いで2回使用していることなど、その頻度、態様からみて、少年の覚せい剤に対する親和性はかなり深化していると認められ、事案は悪質である。
少年は、小学生時代から、シンナー吸引、窃盗などの非行を始め、児童相談所に係属して一時教護院に収容されたが、保護者の強制引取りにより十分な指導を受けないままに退所し、以後も非行から脱却することができず、中学生当時の昭和61年には公務執行妨害等により身柄拘束を受け、試験観察を経て不処分となったものの、少年の非行傾向はその後も収まらず、平成元年6月には前件傷害により再度鑑別所収容の上、保護観察処分を受け、現在保護継続中である。
にもかかわらず、少年は、最初の数か月を除き、保護司と接触せず、保護観察を真摯に受けようとする姿勢が全く見られないばかりか、最近では定職にも就かず、パチンコなどをしながら、仲間と飲酒遊興にふける生活を続けてきたものであって、少年の生活の崩れ、勤労意欲の欠如ははなはだしく、本件非行も右生活上の問題点の延長上にあるものというほかはない。また、父母は離婚しており、いずれも監護能力は低い上、本件の引き金にもなった不良交友が続いており、社会内には少年の更生を図る環境を見出すことはできない。
そこで、少年の処遇であるが、本件の重大性や少年があと3か月で成人に達することと、更には成人である共犯者らとの処分の均衡等を考慮すれば、少年を検察官送致として刑事処分を受けさせることも十分考えられるところである。もっとも、少年は前件審判後は本件に至るまでこれといった再犯はなく、この点は評価できること、覚せい剤に対する危険性の認識、罪障感はやや乏しいものの、覚せい剤提供者である友人らとの接触が断たれれば、必ずしも同種再犯の可能性は高くないとも考えられること、上記のとおり、少年の非行の背景には生活全般の崩れがあり、この点を改善し、積極的で地道な生活への意欲を喚起すれば更生は十分可能であると認められることなどを総合検討すると、少年に対しては、今一度保護処分を選択することとし、ある程度長期間にわたり施設内に収容して覚せい剤との強制的な隔絶を図りつつ、強力な指導によって薬物使用の危険性と成人を迎える人間としての社会的責任とを十分に自覚させるとともに、自制力や健全な社会習慣を身につけさせ、就労意欲と規範意識を喚起することが、将来に向けての少年の健全育成の見地から適切な処遇であると認める。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院へ送致することとし、主文のとおり決定する。